気候変動が想定最大クラスの降雨に与える影響評価 :線状降水帯を対象として
平賀優介(東北大学工学研究科)

Clausius–Clapeyron scaling Climate Change Probable Maximum Precipitation

概要

近年、極端降雨の量と頻度が増加しているが、気候変動が想定最大規模(L2)降雨へ与える影響は十分に解明されていない。平賀優介助教(東北大学)らは、気候変動の影響を数値気象モデルWRFへと反映するモジュールを開発し、気候変動を考慮して想定最大規模降雨を推定する手法をスーパーコンピュータAOBA-Sに実装した。多様な気候変動シナリオと降雨域の空間移動を組み合わせた大規模アンサンブルシミュレーションを実施し、線状降水帯に伴うL2降雨の変化率を世界で初めて定量化した。その結果、L2降雨の増加率がClausius–Clapeyron則の最大3倍にも達する可能性を示した。最高峰の学術誌を含む複数の論文掲載や、国内外での社会実装に向けた高い評価を得るなど、学術・社会の両面で有意義な知見を提供した。

主要な成果

  • 気候変動の影響をWRFへ自動反映する疑似温暖化モジュールを開発し、スーパーコンピュータAOBA-S上での並列実行による高速化を実現した
  • 高解像度WRF計算をスーパーコンピュータAOBA-S上で大規模並列化することで、多数の極端降雨シナリオを現実的な計算時間で実行可能とした
  • 4つの全球気候モデル、2種類の排出シナリオ、空間移動アンサンブルを組み合わせた480ケースの大規模計算を実施し、不確実性を考慮したL2降雨評価を可能にした
  • L2降雨の増加率がClausius–Clapeyron則の示す約7%/Kを大幅に超え、最大21%/Kに達する可能性を世界で初めて定量化した
  • 水蒸気増加だけでなく、下層の収束強化や潜熱放出による上昇流の強化などの力学的要因が極端降雨増加に重要であることを解明した
  • Journal of HydrologyやJournal of Hydrometeorology等、分野最高峰の国際誌へ複数掲載され、学術的に高く評価された
  • 日本経済新聞やYahoo News等でも取り上げられ、気候変動を考慮した防災・治水計画への活用に向けて国内外から高い関心が寄せられている